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No.131 - アップルとサプライヤー [技術]

以前にアップル社についての3つの記事を書きました。

  No.58「アップルはファブレス企業か」
  No.71「アップルとフォックスコン」
  No.80「アップル製品の原価」

の3つです。今回もその継続で、アップル社とサプライヤーの関係、特にアップル製品の製造(最終工程である製品の組立て = アセンブリ)を受託しているフォックスコンとの関係について、最近の新聞記事から感じたことを書きたいと思います。なお、フォックスコンは、台湾の鴻海ホンハイ精密工業の中国子会社である富士康科技集団の通称ですが、鴻海(ホンハイ)も中国子会社も区別せずにフォックスコンと書くことにします。

その前に No.58No.80で書いたことを振り返ってみると、まず No.58「アップルはファブレス企業か」ではアップル製品の製造(製品組み立て)を受託しているフォックスコンに関して、

アップル製品の原価に占める「組立費」の割合は 5% 以下だと考えられる。

アップル製品の販売価格からみた製造原価の割合(原価率)は50%以下だと考えられる。

原価率が50%、組立費の割合が5%だとしても、販売価格に占める組立費は2.5%である。組立費の多くは人件費のはずだが、仮に人件費が倍になったとしても、製品価格を高々2.5%押し上げるだけである。人件費の影響はこの程度に過ぎない。人件費が安いから中国の会社に委託する、といった単純なものではないはずだ。

フォックスコンがアップルに提供している最大の価値は「機動力」である。新製品を一気に市場投入するときの「需要変動」に耐え、大量の製品を、速く、品質良く組み立てられるのが、フォックスコンの価値である。それはアップルのビジネスにとって必須である。

ということでした。また No.80「アップル製品の原価」ではアメリカ国際貿易委員会(ITC)のホームページの情報から、iPod Classic(正確には、iPod 2005年モデル 30GB)について次の内容を書きました。

iPod Classicの販売価格は299ドルで、製造原価は145ドル、原価率は48%である。

製造原価のうち「組立費」は 3.86ドルであり、製造原画に占める割合は 2.7% である(ここまでが ITC のホームページの情報。委託されたアメリカの研究者の推定)。

「組立費」の多くは人件費のはずであり、組立てを受託しているフォックスコンの利益は、極めて少ないと推定できる。フォックスコンはアップルに自社の「製造受託サービス」を安く売りすぎているのではないか。

しかし「代替可能性」ということからすると、フォックスコンがやっている製品の組立ては他社でも代替できると考えられる。そこにフォックスコンの「厳しさ」がある。

という点です。iPod Classicの場合、製造原価の半分ほどは東芝の超小型ハードディスク・ユニット(HDD)であり(ITCによる)、これは他社がまず真似できない部品であって、東芝はこのビジネスでしかるべき利益を出していただろう、という推測も書きました。

iPod Classic(2005モデル)は9年ほど前の製品で、一時代前の感がありますが、最新製品の状況はどうなのでしょうか。最近、日経の山下記者が 2014年9月に発売された iPhone6 についての報告を書いていたので、それを紹介します。

iPhone6_2Models.jpg


iPhone6 の組立て費


2014年9月にアップル社は iPhone6(ディスプレイ:4.7インチ)と iPhone6 Plus(ディスプレイ:5.5インチ)を発売しました。このうち iPhone6 の組立て費について、日経産業新聞に記事が掲載されていました。


「 iPhone6 」はつらいよ
  加工費4ドル、本体の0.6%

9月の発売から出足好調な米アップルのスマートフォン(スマホ)「 iPhone(アイフォーン)6 」。店頭の勢いとは対照的に、製造の現場の実情は厳しいようだ。米調査会社のIHSによると、受託生産している台湾のEMS(電子機器の受託製造サービス)が手にする利益はごくわずかだ。

新型 iPhone は台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と和碩聯合科技(ペガトロン)の2社が受託生産している。IHSがスマホを分解して部品などのコストを試算したところ、鴻海やペガトロンが得る組立加工費は画面サイズが4.7インチの「6」で4ドル(約440円)だった。通信契約なしの容量16ギガ(ギガは10億)バイトの本体価格649ドルの 0.6%にすぎない。

加工費や部品価格を含めた総生産コストは200ドル。販売価格からこれを差し引いた残りの449ドルの多くはアップルの懐に入る計算だ。鴻海など台湾のEMSが存在しなければiPhoneの生産は難しいが、「下請け」のつらさが改めて浮き彫りになった形だ。

一方、鴻海やペガトロンの生産拠点がある中国では人件費がうなぎ登り。両社の2013年の売上高営業利益率はいずれも1~2%台に低迷した。iPhone6 は組み立ての難易度が高いうえ、米国の人権団体などが工場の労働環境に常に目を光らせている。「おいしい仕事」とは必ずしもいい切れない。

鴻海の連結売上高に占めるアップル向けの比率は4~5割と大きい。郭台銘董事長は通信や電気自動車事業への参入で「脱アップル依存」をめざしているが、収益への大きな貢献は数年先になる。当面はアップルからの受注に頼る「薄利多売」を余儀なくされそうだ。(台北=山下和成)

日経産業新聞(2014.10.06)

注意点は米国価格の649ドルというところですね。これはいわゆる "SIMフリー版" iPhone6(16GB)の価格です(記事には「通信契約なし」と書かれている)。原価を問題にするときには、通信契約とセットの価格ではない「製品のフルプライス」と比較する必要があります。なお2年間の通信契約と併せて購入すると、iPhone6 は200ドル程度(米国)です。

この記事でわかることは、まず、iPhone6 の製造原価は200ドルであり(IHS推定、以下同じ。IHSは米国に本社がある大手の情報サービス会社)、販売価格649ドルの31%だいうことです。つまり、

  iPhone6 の原価率は31%

ということになります。アップル社の膨大な利益をみてもこれは納得できます。iPod Classic の原価率が48%というのは高すぎると思いながら以前の記事(No.80「アップル製品の原価」)を書いたのですが、iPhone6 の方がアップルビジネスの典型だと考えられます。もちろん残りの69%は、販売店のマージンと、アップル社の粗利益であり、アップル社の粗利益は、研究開発費、営業・販売促進費、ソフト開発費(研究開発費の一部)、会社をオペレーションするための費用(総掛り費用)などに使われ、残りが営業利益になるわけです。

一方、フォックコスンがやっている製造受託関連では、

  組立費の製造原価に対する割合は2%

ということになります。製造原価が200ドル、組立費が4ドルだからです。新聞の見出しには販売価格に対する比率が0.6%とあって、フォックスコンの「取り分」が少ないことが強調されていますが、これはあまり意味のない数字でしょう。

さらにわかることは

  組立費が4ドルだということは、2005年当時に比べてほぼ同じ

ということです。iPod Classic(2005)年とiPhone6(2014)は両方とも約4ドル(推測)です。この2製品を比べると部品点数はおそらく数倍違うと思います。従って実装密度が全く違い、中の基板の形状も iPhone6 の方が複雑でしょう。厚みも薄くなっている。圧倒的に iPhone6 の方が組立ての難易度が高いはずです。しかも日経の山下記者が書いているように、中国の人件費は上昇傾向にあります。そういう変化にもかかわらず「組立費はほぼ同じ」なのです。機器の高度化に従って製造原価はどんどんあがり、また販売価格も上昇する。人件費もあがる。しかし組立費は変わらない。

製品の最終組立て・検査は人手に頼った人海戦術です。コストの多くは人件費のはずであり、人件費上昇のインパクトは大きい。もちろん旧機種の経験から「カイゼン」を繰り返して一人当たりの生産量を増やすことはできるでしょうが、限界がある。このあたりがフォックスコンの製造受託ビジネスの厳しさだと思います。

引用した記事にはもうひとつ注目すべきことが書かれています。

  アップルは iPhone6 の製造をフォックスコンとぺガトロン(和碩聯合科技)の2社に委託している

ということです。製造受託におけるフォックスコンの「独占」は崩れていたのです。ぺガトロンはフォックスコンと同じく台湾のEMS(電子機器の製造受託サービス)企業です。前の記事の No.80「アップル製品の原価」において、フォックスコンのビジネスは「代替可能」だと書きましたが、その通りになったわけです。この独占が崩れたことも、フォックスコンの利益を押し下げる要因として働いているでしょう。


iPhone6 / iPhone6 Plus の原価


では、組立費以外の製造原価はどれぐらいでしょうか。日経の記事のもとになったIHSの推定は、IHSのホームページに公開されています(2014.9.23付けのニュース・リリース)。それを以下に引用します。iPhone6 / iPhone6 Plus の16GBモデルです。

項目 iPhone6 6 Plus 備考
販売価格 $649.00 $749.00 通信契約なし
部品コスト $196.10 $211.10  
製造コスト $4.00 $4.50 部品組立て・検査
製品原価 $200.10 $215.60 部品+製造コスト
部品コストの内訳
ディスプレイ $45.00 $52.00 IPS液晶+タッチスクリーン
移動通信部 $33.00 $33.00 通信プロセッサと周辺部品
メカ部品 $30.00 $35.00 Mechanical/Electro-Mechanical
オーディオ、センサー $22.00 $22.00 NFCを含む。カメラは別項
メイン・
プロセッサー
$20.00 $20.00 Apple A8 Processor
メモリー $15.00 $15.00 16GB フラッシュ + 1GB DRAM
カメラ $11.00 $12.50 8M pixel + 1.2M pixel
電源管理 $7.00 $7.00  
Bluetooth
無線LAN
$4.50 $4.50  
リチウムイオン
電池
$3.60 $4.60 1810mAh(6)
2915mAh(6 plus)
付属品 $5.00 $5.00 ACアダプタ、ケーブル等
出典:http://press.ihs.com/
[News Releases] → [9/23/14 4:01 pm EDT]

IHSのホームページに記載されている表をもとに作成したものですが、部品コストは金額の大きい順に並べ換えました。もちろん各項目はIHSの分類であって、たとえばセンサーの中には電子コンパス(地磁気センサー)、6軸センサー(加速度+ジャイロ)、気圧センサー(iPhoneで初搭載)などの各種部品が含まれます。

IHSのホームページにも断ってありますが、これは発売直後に分解調査した第1次の概算です。また「部品コスト」は、英語では「BOM Cost」となっています。BOM は Bill of Material のことなので「物質として目に見える部品」のコストです。従って、「目に見えない」知的財産権にまつわるコスト(ソフト、ハードのロイヤリティ料)などは含まれていません。そういったいくつかの前提で表を見るべきです。

表に見られる iPhone6 と iPhone6 Plus の部品コストの差異は、大きさの違い(ディスプレイ、メカ部品)や、リチウムイオン電池の場合は容量の違いですが、カメラのコストが違うのは iPhone6 Plus にだけ「光学式手ぶれ防止」がついているからです。

しかしこれらの部品コストの違いは、製造コストと合計してもわずか15.5ドルです。このため、iPhone6 Plusの原価率は30%を切っていることになります。IHSのニュースリリースのタイトルも、iPhone6 と iPhone6 Plus について「販売価格は100ドル違うのに、製造原価は15.5ドルしか違わない」というものでした。iPhone6 Plus を売った方が、アップルにとっても販売会社にとっても「おいしい」ビジネスになることが推定できます。たぶん販売会社は「片手では操作できない」5.5インチのスマホの方を積極的にプッシュするでしょう。



IHSのホームページでの解説と、日経エレクトロニクス(2014.10.13号)、日経産業新聞(2014.10.9)の記事によって、主な部品のサプライヤー(推定)をまとめると、以下のようになります。

ディスプレイ
ジャパン・ディスプレイ、LG Display(韓国)
移動通信部
Qualcomm(米)
オーディオ/センサー
6軸センサー:Invensense(米)、加速度センサー:Bosch Sensortec(独)、電子コンパス:旭化成エレクトロニクス、NFC:NXP Semiconductor(オランダ、元フィリップスの半導体部門)、オーディオアンプ:Cirrus Logic(米)、など
メイン・プロセッサー
設計:アップル。製造:TSMC(台湾)、Samsung Electronics(韓国)
メモリー
Samsung Electronics(韓国)など
カメラ
カメラ本体:ソニー、光学式手振れ防止アクチュエーター:アルプス電気、ミツミ電機
電源管理
Qualcomm(米)、Dialog Semiconductor(米)
Bluetooth/無線LAN
村田製作所
リチウムイオン電池
ソニー、TDKなど

注目すべきは、アップル社はメイン・プロセッサー(A8)の製造を台湾のTSMCと韓国のSamsungの2社に委託している、とIHSが推定していることです(日経はTSMCのみと推定している)。iPhone5S の A7 プロセッサーの製造会社はSamsungだけでした。最初に引用した日経の記事に「iPhone6 の組立てをフォックスコンとぺガトロンの2社に委託している」ことが書かれていましたが、プロセッサーの製造においても「独占」は崩れたわけです。

なおIHSのホームページに明記してあるのですが、ディスプレイ表面のカバー・ガラスにはコーニング社のゴリラ・ガラス(=商品名)が使われています。iPhone6 にゴリラ・ガラスよりも更に硬いサファイヤ・ガラス(人造サファイヤ)を供給するはずだった米国のGTアドバンスト・テクノロジーズ社は、アップルにその採用を見送られ、2014年10月に連邦破産法11条(いわゆる Chapter Eleven。日本の民事再生法に相当)の適用を申請しました。「人ごとではない」と思った(そしてゾッとした)世界のサプライヤーは多いのではないでしょうか。



ちなみに、日経産業新聞(2014.10.9)に、スマートフォンなどの分解調査を手がける日本の会社「フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ」による iPhone6 Plus の部品価格の推定が掲載されていました。IHSの推定と比較すると、以下のようになります。

部品 部品価格 部品価格$ IHS推定
ディスプレイ ¥4,000 $40 $52.5
筐体カバー ¥5,040 $50 $35
メイン・プロセッサー ¥1,200 $12 $20
カメラ ¥1,200 $12 $12.5
無線LANモジュール ¥350 $4 $4.5
出典:日経産業新聞(2014.10.9)

「部品価格$」はフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの推定(日経産業新聞)を1ドル・100円で換算したものです。IHSの推定とは違っていますが、分解して外観からコストを推定しているのでやむをえないところでしょう。部品コストはこの程度の「誤差」を前提として考えるべきです。ただし全体的な傾向は、二つの推定で合っていると考えられます。

この表においては、日経産業新聞の記事の「筐体きょうたいカバー」と、IHSの「メカ部品」(原文では Mechanical/Electro-Mechanical)を対応させました。IHSの表現では、たとえば内部のコネクタやケーブルなども含まれていると考えられますが、「筐体カバー」も「メカ部品」も、コストのほとんどはアルミ製の「ユニボディ筐体」だと考えられます。以下、これについてです。

iPhone6_Design.jpg

iPhone6_Design_details.jpg


ユニボディ


部品コストの表を見て思うのは、筐体きょうたいの部品コストが大きいことです。iPhone6 Plus に関するIHSの推定では、ディスプレイに次いで2番目に高コストの部品だし、日経産業の推定に至ってはディスプレイよりも高くなっています。推定がばらつくのはやむを得ないとして、とにかく「筐体はトップクラスの高額部品」であるのは確かなようです。世界の著名なエレクトロニクス企業が最先端技術を駆使して作った部品がズラッと並ぶ中で、この筐体の「高額ぶり」は目を引きます。

iPhone6 / iPhone6 Plus の筐体はアップルが「ユニボディ」と呼んでいるものです(アップル・ジャパンの2014-9-9付けのプレス発表)。そしてこの「ユニボディ筐体」は、No.71「アップルとフォックスコン」で書いたように、一個一個、金属の塊から削り出して作られています。「削り出し」で何千万個という部品を作るのは製造業の常識を逸脱しているのですが、アップルは工業製品としての「美しさ」を追求するためにこういう作り方をしています。iPhone6 / iPhone6 Plus のホームページでも、まずデザインの美しさが強調されている。その「代償」が高価な部品コストであり、それは消費者が支払っているわけです。

そして No.71 でも紹介したのですが、この「ユニボディ筐体」の有力な部品メーカーがフォックスコンなのです。フォックスコンは iPhone6 の場合、4ドルの製造受託会社であると同時に、30ドル(いずれもIHS推定)の部品サプライヤーである可能性が高いと考えられます。もちろん、製造受託やメイン・プロセッサーの製造で「独占」が崩れていたように、ユニボディ筐体が複数の部品サプライヤーに発注されていることも大いに考えられます。しかしアップルとフォックスコンの関係を考えると(No.71)、フォックスコンがゼロということはないでしょう。切削加工でユニボディ筐体を迅速に作るためには大量の工作機械(小型のマシニング・センター。数万台規模)が必要であり、そういった「特殊な」「アップルのための」「リスクいっぱいの」設備投資をする企業は多くはないと考えられるからです。

フォックスコンは「4ドルの製造受託では利益が出ないが、30ドルの部品供給では利益を出している」という可能性があると思います。最初に引用した日経の記事で「iPhone6 はつらいよ」とありましたが、アップルとの取引き全体としては「iPhone6 はつらくない」かもしれない。日経の山下記者も、そのあたりを突っ込んで書いて欲しかったと思います。



しかし考えてみると「ユニボディ筐体を作る」というのは、「製造受託」がそうであったように「代替可能」です。金属加工のノウハウが必要なことは確かですが、基本的にはマシニング・センター(ほとんどがファナックなどの日本製だと言われています)を大量に導入すればよい。金属加工は長い歴史のある技術なので、優秀な技術者を高給でリクルートすることもできるでしょう。追従してくる会社はあるはずだし、既にそうなっている可能性が大です。

日経の山下記者は「鴻海の連結売上高に占めるアップル向けの比率は4~5割」と書いていますが、フォックスコンはアップルという「特別な会社」との依存関係にあり、アップルの「特別なビジネスモデル」に深く関与し、しかもその関係性(製造受託、ユニボディ筐体)は他社と代替可能です。マクロ的に見ると非常に厳しい状況だと考えられます。「脱アップル依存」が急務だということは、全くその通りでしょう。


技術革新とエレクトロニクス・ビジネスの命運


フォックスコンの「製造受託 = 電気製品の組立て受託」と「ユニボディ筐体」が他社でも代替可能な理由は、それが特許権で守られていない(守れない)こともありますが、本質的には大きな技術進歩が望めない領域であること、つまり技術という観点からすると「サチっている」領域であることです。成熟技術のビジネス領域には他社も新規参入しやすい。

これに反して、技術革新の真っ最中で今後もそれが続くと見込まれる分野には、新技術を先頭にたって追求していく限り、独占的な地位を維持しやすいはずです。たとえばクアルコムの通信プロセッサーで言うと、そもそもモバイルの通信方式は3GからLTE/4Gになっていき、さらに世界の通信会社は次の5Gの検討をしています。当面の間、通信技術が進歩していくのは確実です。

ソニー製のカメラ・モジュールもそうです。コンパクト型のデジカメの売れ行きが厳しいのは、スマートフォンに押されているからで、コンパクト・デジカメ各社はスマホではできない機能を必死に追求しています。逆に言うと「スマホのカメラ機能では出来ないことが、まだいっぱいある」わけです。スマホのカメラは、今後もデジカメを追いかける技術革新が続くと考えられます。その実現例の一つが iPhone6 Plus の「光学式手ぶれ防止」というわけです。ちなみに、ソニーがサプライヤーの一つであるリチウムイオン電池も、No.39「リチウムイオン電池とノーベル賞」に書いたように、まだまだ未完の技術です。

iPhone6 / iPhone6 Plus の「製造原価」から感じられるのは、技術革新の先頭を切って「代替困難」な製品を作ってアップルに「提案」できる企業と、アップルの「下請け」(日経の記事の表現)に留まらざるを得ない企業の差です。それは iPhone に限らずエレクトロニクス企業の命運を左右するものであり、iPhone にその縮図があると思いました。




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