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No.54 - ウォークマン(1)買わなかった理由 [技術]


ヒラリー・ハーン


No.11「ヒラリー・ハーンのシベリウス」で、ヒラリー・ハーン(1979- )とウォークマンの関係について触れました。そこで紹介したのですが、彼女はシベリウスのヴァイオリン協奏曲について次のように書いています。

シベリウスの協奏曲にかんする私の最初の思い出は、とても変わっています。子供のとき、野球場ではじめてこの曲をテープレコーダで聞いたのです。ボルティモア・オリオールズの試合の最中に。
(CDのライナーノートより)

No.11-1 HilaryHahn.jpg
シベリウスのヴァイオリン協奏曲
ヒラリー・ハーン
アメリカの首都・ワシントンDCの北に隣接してメリーランド州があります。その州都のボルティモアが、ヒラリー・ハーンの出身地です。子供の時からオリオールズの試合を見に野球場に足を運ぶのは、アメリカ人としてはごく自然な行動だと思います。

ポイントは、彼女が「野球場で初めてシベリウスをテープレコーダーで聞いた」と書いているところです。この「テープレコーダー」は、ソニーのウォークマン、ないしはその類似製品ですね。そういう風に強く推測できます。野球場に持っていって音楽を聞くのだから・・・・・・。ウォークマンはヒラリーの生まれた年(1979)に発売され、またたく間に世界に広まりました。クラシック音楽の世界においても「ベルリン・フィルやニューヨーク・フィルのオーケストラの連中が先を争ってウォークマンを買い求めた」という話を No.11 で紹介しました。そして「音楽を戸外に持ち出して聞く」という新たなライフスタイルを作り出した。類似品も数多く発売されたのですが、ヘッドフォンやイヤフォンで聞くカセットテープ再生専用機が「ウォークマン」と一般名称で呼ばれたように、SONYの名前とともにダントツのブランド力を誇ったわけです。

振り返ってみると、20世紀以降の音楽文化はテクノロジーの発達と相まって発展してきました。レコード、CD、各種の電子楽器、テープレコーダー、デジタル・オーディオプレーヤー、ネットによる音楽配信・・・・・・。こういったテクノロジーは音楽の新しい楽しみ方を作ったし、また音楽そのものも新たなテクノロジーを前提にして作られ、演奏されるようになり、相互補完的に発達してきたわけです。ウォークマンはそういった新たな音楽シーンを作ったエレクトロニクス製品の典型でしょう。

以下はそのソニーのウォークマンについです。ただし初代の「カセット・ウォークマン」ではなく、デジタル・オーディオ・プレーヤー(DAP)としてのウォークマンです。ソニーが一時、ネットワーク・ウォークマンと呼んでいたものです。以下、初代ウォークマンと区別するときには「DAPウォークマン」と書きます。

このDAPのジャンルでは、良く知られているようにアップル社のiPodが市場を席巻しました。現在の日本ではウォークマンとiPodが市場を2分していますが、一時はiPodが7割とか8割のシェアを持っていた頃があります。

今回のテーマは、特にiPodと比較したソニーのDAPウォークマンを振り返ってみようというものです。DAPの市場は、今後スマートフォンに押されて縮小していくでしょう。しかしDAPは携帯端末やテレビの今後を考える上で格好の教材だと思うのです。「iPodはソニーが作るべき製品だった」とソニーの経営幹部の発言が報道されたこともありました。本当にそうなのかについても触れたいと思います。まず、DAPウォークマンの比較対象であるアップルのiPodからです。


アップルのiPod


iPodはアップルにとって一つの大きな転機となった重要な商品です。このiPodが起点となって

  ◆ iPod  2001
  ◆ iPod touch  2007
  ◆ iPhone  2007
  ◆ iPad  2010

と進化していき、現在の時価総額世界一のアップルを作りあげたわけですね。スティーヴ・ジョブズが残した大きな「遺産」でしょう。

この成功は大変にドラスティックでした。そのためマスコミのアップルに関する論評には過度の「礼賛記事」が見受けられるように思います。その一つが「iPodのビジネスモデル」論です。iPodはハードウェア販売とコンテンツ配信事業(iTunes Music Store による音楽の販売)をミックスしたビジネスモデルを作ったことが成功原因だ、とよく言われます。はたしてそうなのでしょうか。

歴史的経緯を振り返ってみるとiPodは次のように発展してきました。時期はいずれもMac版のリリース時期です。

①iTunes のリリース(2001.01
iTunesはPCで音楽を聴くためのソフトウェア。

②iPodの販売(2001.11
iPodはiTunesに蓄積した音楽を戸外に持ち出すためのハードウェア

③iTunes Music Store(iTMS)の開始(2003.04
音楽のネットワークによる配信。2006.09 に音楽以外のコンテンツも含めて iTunes Store となる。

つまり、PCで音楽を楽しむためのiTunesが発売され、次にiTunesでPCに蓄積した音楽を戸外に持ち出すためにiPodが商品化され(大きな転換点)、最後に iTunes/iPod をより魅力的にするために、iTunes Music Store(現在のiTunes Store)が開始された、という順序です。ハードウェアとコンテンツ・ビジネスの相乗効果というのはiTMSがあってこそですが、それはiTunes/iPodを売るために「後付けで」作られたというのが実態に近いのではないでしょうか。

音楽をダウンロードして購入するのがあたりまえになった現在から振り返ってみると、いかにもiPodが新たなビジネスモデルの一環として製品化されたように見えますが、それは結果論だと思います。アップルと言えども試行錯誤してきたはずです。

しかもiPodが躍進した時期にiPodで聴かれていた音楽のうち、iTMSで購入した「有料の曲」が全体に占める割合は僅かだったはずです。ほとんどは自分の所有CDからPC経由でリッピングした「無料の曲」だと推測します。「ハードとコンテンツビジネスの相乗効果」というのは、少なくともiPodのブレーク時期においては実態を言い当ててはいないでしょう。

それには、ある事情も関係していました。(当初の)iTMSの問題点は、iTMSで販売する楽曲にDRM(コピー・コントロール)がついていて、iTMSで購入した曲は iTunes/iPod でしか聞けなかったことです。これは別にアップルが望んだことではなく、アメリカの4大レコード会社から楽曲の提供を受けるための交換条件だったと、スティーブ・ジョブズは2007年に自社のWebサイトで暴露しました。さらに彼は、次のように付け加えたのです。

[スティーブ・ジョブズ]

現状として、iPodユーザがiPodで聞いている楽曲のうち、iTunes Store から購入したDRM付きAACは3%にすぎず、残りの97%はCDからリッピングしたデータなどで、なんのコピー・コントロールもついていない。

たくき よしみつ著
『大人のための新オーディオ鑑賞術』より
(講談社・ブルーバックス 2009)

コピー・コントロールをやめたい側の発言なので割り引いて受け取る必要があるにせよ、iPodの曲の大半はiTunes Storeで購入した曲ではなかったことは確かでしょう。つまりスティーブ・ジョブズが自ら認めたように「ハードウェア・ビジネスとコンテンツ・ビジネスの相乗効果」というのは、少なくともiTunes Music Store開始から4年後の2007年時点では正しくないのです。なお、AACはiPodの標準の音楽データ圧縮形式です。

それよりも、iPodが市場を席巻した本質的な理由は別のところにあると思います。よく言われるのは iPod のユーザ・インターフェース良さ、独特のアナログ的な操作性の斬新さです。もちろんそれもありますが、もっと根本的な製品企画に理由があると思います。それは「ソニーがiPodのような製品を市場に出せなかった理由の裏返し」であり、また私が「DAPウォークマンを買わなかった理由」と密接に関係しています。それを以下に書きます。「iPodはソニーが出すべき製品だった」と言われながら、「実はそんなことはソニーには無理だった」ことの実証例の一つだと思うのです。


DAPウォークマンを買わなかった理由


私はソニーの初代ウォークマン(カセット・ウォークマン)は2台か3台か買いました。しかしDAPウォークマンは一度も買ったことがありません。その理由は次の2点です。

 MP3 

初期(1999 - )のDAPウォークマン(メモリースティック・ウォークマンが最初の製品)は、ATRAC(ATRAC3)というソニー独自の音楽データ圧縮方式をサポートし、当時世界的に最も広まっていたMP3をサポートしていませんでした。これはDAPとしては致命的な問題点です。ほとんど欠陥と言ってもいい。MP3をサポートしないということは、利用者に(たとえば私に)次のような不利益をもたらします。

英語のリスニング
DAPの利用目的は、音楽を聴くことはもちろんなのですが「英語のリスニングを日常的にしたい」というのも大きな目的でした。たとえば、アメリカ政府はVOA(Voice of America)などのサイトを通して、英語としての質が高い音声データを自由にダウンロード出来るようにしています。内容もニュースから始まって、アメリカ文化の紹介や学術的内容の解説までさまざまです。

これらの英語の音声データはMP3で提供されていました。あたりまえだけど、ソニー独自の形式であるATRACでは提供されません。この1点をとってみても、ソニー製品を買うことは No なのです。

他機種とのデータ互換性
MP3をサポートしないソニーの言い分は「音質はMP3よりATRACが優れている。CDをリッピングして楽しむならATRACで十分。MP3をATRACに変換することも可能」ということだったのでしょう。音質が優れているというのは確かにその通りかも知れません。

しかしこの「製品供給サイドの論理」にも大きな問題があります。ATRAC形式で保存・蓄積したデータはソニーのDAP製品でしか再生できないし、将来ともそうである可能性が高いのです。ユーザとしては、ソニーを含めその時点で最も気に入ったDAPを使いたい。PCに蓄積した音源データは個人の大切な資産です。その資産が、将来別の会社のDAPに変えることを想定したときに無駄になるという事態はユーザとしては納得できません。

またデジタル・オーディオが普及すると、音源データをリビングルームに設置したオーディオ装置と高性能スピーカで聞くというスタイルが定着することも目に見えていました(事実、そうなっています)。ということは、PCに蓄積した音源データを「使い回す」ことになります。そのときソニーのオーディオ装置でしか再生できない、という状況は避けたいのです。

技術的にMP3(およびその他の標準形式)をサポートできない理由があるとは思えません。一方のアップルはどうかと言うと、iPodは独自のデータ圧縮方式である「Apple Lossless」とともに、当初から標準形式であるMP3やAACをサポートしていました。アップルだけではありません。当時は各社からDAPが発売されていましたが(東芝、Creative、Kenwood・・・・・・)MP3をサポートしない製品というのは覚えがありません。ソニーのウォークマンは「MP3をサポートしないDAP」という特異な製品だったのです。

なぜソニーがこのような変な仕様にしたのか、理解に苦しむところです。ソニー独自のATRAC形式の楽曲データを増やしてユーザをソニーに囲い込もうという意図だと見なされてもしかたがないでしょう。そういう意図だとしたら「利用者視点」を欠いた製品ということになり、これは失敗パターンの典型です。

外見的・機能的にどんなに似ていても、デジタル機器とアナログ機器とは違う装置と考えた方がよい。その違いの大きなものは「デジタル化された情報は、極めてローコストで移動したり、流通したり、使い回しができる」ということです。デジタル化された音楽データは「情報」です。それはハードウェアとは独立しているし、記録する媒体にもよらない。音楽・音声を情報化するメリットは多大なものがありますが、そのメリットの核心部分を殺すような製品が市場に受け入れられないのはあたりまえでしょう。CDを開発して音楽をデジタル化した(=情報化した)のは、ほかならぬソニー(とフィリップス)なのに・・・・・・。

 SonicStage 

さすがにソニーも反省したのか、DAPウォークマンは途中からMP3のサポートを始めました(2004.12.10発売のNW-HD3)。最初のメモリースティックのDAPウォークマンの発売開始から5年後ということになります。これ以降、いつだったか忘れましたが、真剣にDAPウォークマンの購入を検討したことがあります。私はiPodを持っていたのですが、DAPウォークマンの音質の良さが魅力だったのです。

このとき私の妻はDAPウォークマンを持っていて、我が家のPC(Windows)にはSonicStageというソニーの楽曲管理ソフト(iPodのiTunesに相当)がインストールされていました。このSonicStageを試しに少しさわってみて、変なことに気がつきました。妻の楽曲は妻が管理し、私の楽曲は私が管理するということを1台のパソコンでどうやってやるのかが分からなかったのです。いわゆる「マルチユーザ」の機能です。

Windowsはずいぶん前からマルチユーザOSです。従ってアプリケーションもマルチユーザ対応が普通であって、Windowsにどのユーザでログインするかによって、たとえばインターネット・エクスプローラではユーザごとの「初期画面」や「お気に入りメニュー」になるし、メーラーではユーザごとのメールボックスが扱える。これはアプリとしてはあたりまえです。ところが SonicStage ではそのマルチユーザ環境をどうやって実現するのか、それが分かりませんでした。

不審に思ってソニーのサポートデスクに電話して聞いてみると、SonicStage はマルチユーザに対応していないと言うのですね。じゃ、妻と私の2台(1台は購入予定)のDAPウォークマンを、PCにある全然別種の楽曲群とどうやって同期させるのですかと質問すると、妻用・私用の2つのプレイリストを作りプレイリスト単位に同期させてくれ、という答えなのです。そのやり方で同期ができることは理解できますが、そんな運用は実行不可能であり、まっぴら御免です。

この答を聞いてウォークマンを購入する気は無くなりました。ちなみに、当時私が一人で使っていたアップルのiTunesはどうかとヘルプを見ると、ちゃんと「マルチユーザ」の説明がありました。しかも方法は3種類もあり、そのやり方が全部解説されていたのです。

DAPはPCの楽曲管理ソフトと表裏一体で使うものであり、管理ソフトの使い勝手の良さは非常に重要です。この件では「DAPウォークマン / SonicStageは、あまりコンピュータのことをよく理解していない人間が作っているな」という感じを受けました。それと全く対象的なのが iPod / iTunes です。特にiTunesの使い勝手の良さは大したものだと思います。

なお、最新のSonicStageがどうなっているかは知りません。確かめる気もないし、私には関係ないことだからです。

断っておきますが、私はソニーの製品が嫌いとか、そういうことは全くありません。iPodを聞いているイヤフォンは今でもソニー製で、カタログ価格・2万5千円程度の、このジャンルでは「高級機」です。この製品には全く満足しています。



我々はハードとソフトで構成されるデジタル情報処理装置をコンピュータと呼んでいます。企業用のもの(サーバなど)や個人用のPCが代表的ですが、一見コンピュータとは見えないが実質的にそうであるものも多い。現代のクルマには、ハイグレードのものだと50台以上のコンピュータが搭載され、エンジン制御とかABS制御とかNaviとかを担っています。個人用でも、携帯電話やスマートフォンや電子辞書や電子書籍リーダはコンピュータです。

従来「家電」と言われていた領域で、主として情報を扱うものは、どんどん「デジタル家電」になってきました。このデジタル家電もコンピュータです。そして私が(当時の)DAPウォークマンについて持った全般的な感想をまとめると

ウォークマンはデジタル家電なのに、コンピュータの発想で作られていない。

という感じなのです。ソニー自体は、日本の有力なコンピュータ(パソコン=VAIO)メーカーなのですが・・・・・・。


iPodはコンピュータ


コンピュータは、いくつかの特徴があります。デジタル家電も念頭にその特徴をまとめると以下のようになるでしょう。

情報はすべてデジタル・データで処理される。ただし人間や外界とのインターフェースになる部分は別(たとえば音声)。
ハードウェアとソフトウェアが分離されている。ソフトウェアは追加・修正・入れ替えができる。
ソフトウェアはOS(Operating System。基本ソフトウェア)とアプリケーション(アプリ。応用ソフトウェア)に分離されていて、OSとアプリのインターフェースが規約化されている。アプリを追加・変更することで、製品の機能が追加・変更される。
コンピュータが扱うデジタルデータは、ハードウェアとは独立している。それはソフトウェア(主としてアプリ)に依存する。アプリを変えることで、多様なデータを処理できる。
多様な周辺機器が接続できる汎用的な機構を備えている。
ネットワークに接続される

の6点です。個人が使うコンピュータの代表格であるPCはこの特徴を備えています。

コンピュータ.jpg
コンピュータの構成要素
この構成は企業用のコンピュータやパソコン(PC)に共通である。iPodもまたこの構造をしている(但しネットワーク接続機構はない)。iPodは外観的・機能的には完全なDAP(Digital Audio Player)に見える。iPhoneも同じ構造をしている。
iPodはDAPを装ったコンピュータです。コンピュータをDAP風に見せかけた、と言ってもよい。その「見せかけ」が非常にうまいと思うのです。①から⑥の特徴をiPodに即して言うと、次のようになるでしょう。

まず、①と②はコンピュータに限らず、あらゆるデジタル情報機器の特徴です。③以下がコンピュータらしいところです。

③のOSの存在とアプリの付加は、iPodではほとんど隠蔽されています。しかしiPodに用意されているスケジュール管理やゲームなどのアプリをみても、③のような作りがされていることが分かります。デジタル音楽データをAAC、MP3、WMAなどの圧縮形式にしたり復元したりするソフトウェアを「コーデック」と言いますが、圧縮音楽形式ごとにあるコーデックも、OSからみるとアプリの一つです。標準的なコーデックは流通していますから、メジャーな音楽圧縮形式をサポートするのは、さほど難しいことではありません。

そのことは④のデータとハードウェアの独立性にも関係します。コンピュータの扱うデータはデジタル情報であり、それはあくまで情報です。それは特定のハードウェアや記録媒体に依存するものではありません。物理的実態とは遊離して存在するのが「情報」であり、特定の媒体に書き込まれているのは「情報の仮の姿」に過ぎない。この「情報という抽象化されたもの」と「アプリ」のペアで、多種多様な形式のデータが扱える、かつ、物理的実態を越えて移動できるというのが、コンピュータの強力なところです。

iPodが華やかな頃「Pod Cast」が流行したことがありました。iPodとBroadcast(放送)を融合した言葉で、Webにアップされたニュースなどの音声情報をiPodにダウンロードして聴くというものです。いったんニュースをデジタル音声として「情報化」すると、それをラジオで聴くか、インターネット・ラジオとしてPCで聴くか、iPodで聴くかは自由に出来るようになるのです。

音楽もそうです。iTunes Music Store で楽曲を販売するというのは、コンピュータという視点からすると、ごく自然な発想です。情報の入手先がCDではなく(今で言う)クラウドになるだけのことだから・・・・・・。CDに焼き付けられた音楽情報は、あくまで情報の「仮の姿」です。
iPod2001.jpg iPodClassic.jpg
初代iPod(2001)
HDD = 5GB
スクロールホイール
iPod Classic(2012)
HDD = 160GB
クリックホイール
現在のiPod Classicはハードディスク・ドライブ(HDD)を内蔵していて、オリジナルのiPod(2001)の後継製品である。スクロールホイールとクリックホイールなどの違いはあるが、10年以上の時を経ているとは思えないほど「ほぼ同じ」である。大きさもほとんど差はない。

⑤の周辺機器の接続機構について言うと、iPodには「Dockコネクタ」が用意されています。私は自室でiPodの楽曲を聞くときは、ヤマハのアンプ内蔵iPod用スピーカーにiPodから無線で音楽を飛ばして聞いてます。ヤマハが用意したアダプタをiPodのDockコネクタに差し込むと、iPodの音楽がスピーカーから流れ、iPod自身がリモコンにもなる(iPhone や iPad の AirPlay 相当)。非常に便利で、PCを起動してiTunesを立ち上げることもない。元のCDをオーディオ装置で大きなスピーカーで聞いた方が音が良いことは分かるのですが、どうしても「iPod + ヤマハ」になってしまう。これは「堕落」だと自分でも思うのですが、人間をここまで堕落させたのは、元はというとヤマハがアンプ内蔵・無線のiPod用スピーカを開発できるというiPodの「作り」にあるのですね。

⑥のネットワーク接続はiPod単体ではできません(iPod Touch で可能になった)。PCのiTunesと連携することによってネットワーク接続します。

以上のようなiPodのコンピュータとしての性格を徹底させ、ネットワークにダイレクトに接続し、アプリを第三者が自由に追加できるようにし「電話もできるコンピュータ」に仕立て上げたのがiPhoneです。iPhoneにとって電話はアプリの一種であり、従ってアップルが用意した出来合いの「電話アプリ」以外に第三者が作ってもいいわけです(事実、作られています)。世間では iPhone のジャンルを「Smart Phone」と呼んでいます。「賢い電話機」という意味で、つまり「コンピュータ機能もある電話機」というニュアンスですが、実態は違います。「電話もできるコンピュータ」「電話アプリも作れるコンピュータ」がiPhoneです。

以上のようなiPodに比較してウォークマンはどうだったのでしょうか。

次回に続く)


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